今回は、個人事業主やフリーランスの方々がどのような点で正社員よりも保障が少ないのか、生活防衛費を準備するならどのくらいが目安なのかをまとめます。
個人事業主やフリーランスの万が一の場合の保障が少ないのはどうして?
個人事業主やフリーランスは、会社員などとは異なり、万が一の場合の保障が少ないといわれていますが、それはどうしてでしょうか。会社員や一定のパートアルバイトは、企業に雇用されているため、社会保険の加入が義務付けられており、失業保険や労災保険などの手厚い保障を受けることができます。一方、個人事業主やフリーランスが加入しているのは、健康保険と国民年金なので、受けられる保障が少ないというのが理由です。具体的な違いについて、以下で説明します。
●会社員などが万が一受けられる保障:失業保険
会社員や一定のパートアルバイトは、雇用保険に加入しています。万が一、職を失ったときは、一定期間、失業保険を受けられたり、就業支援相談や講習を受けたりすることができます。
個人事業主やフリーランスは雇用保険の対象外なので、仕事が途切れたり、収入がなくなったりした際、補填(ほてん)する保障がありません。
参照:雇用保険制度|厚生労働省
●会社員などが万が一受けられる保障:労災保険
会社員や一定のパートアルバイトが業務災害や通勤災害に遭い、ケガをしたり病気になったりしたときは労災保険で補償されます。しかし、個人事業主やフリーランスは労災保険に加入できないため、各種補償を受けられません。
ただし、以下の業種の場合の個人事業主は、労災保険に任意で加入できる「特別加入」できます。
【特別加入が可能な主な業種】
個人タクシー業者、個人貨物運送業者など/芸能関係作業従事者/アニメーション制作作業従事者/創業支援等措置に基づく高年齢者/ITフリーランス/柔道整復師/あんまマッサージ指圧師・はり師・きゅう師/歯科技工士など
参照:労働保険とは|労働保険特設サイト|厚生労働省
●会社員などが万が一受けられる保障:健康保険の「傷病手当金」
会社員や一定のパートアルバイトは、業務外の病気やケガで長期に働けず、事業主から十分な報酬が受けられない場合、健康保険の制度から「傷病手当金」が受けられます。会社を休んだ日が連続して3日間あったうえで、4日目から、通算して1年6カ月支給されます。実際にもらえる額は、以下の計算式で算出できます。
・1日当たりの支給金額=支給開始日以前の12カ月間の各標準報酬月額の平均額÷30日×2/3
標準報酬月額は、被保険者が受け取る毎月の給与などの区分(等級)ごとに設定されたものをいいます。
一方、個人事業主やフリーランスなどが加入する国民健康保険には、原則的に傷病手当金がありません。
●会社員などが万が一受けられる保障:有給休暇・病気休暇
会社員などは、労働基準法で有給休暇が保障されています。フリーランスや個人事業主にはそのような制度がありません。病気やケガで働けない間は収入が途絶えてしまうため、自己責任で備える必要があります。
個人事業主やフリーランスが必要な生活防衛費は「毎月の生活費の6~12カ月分」
上記の理由により、個人事業主やフリーランスの方は、会社員の方よりも万が一の保障が少ないことがご理解いただけたと思います。一般的な生活防衛費は、「毎月の生活費の3~6カ月分」とされていますが、フリーランスや個人事業主の場合は、多めの「6~12カ月分」を確保するのが望ましいといえます。具体的には、月に25万円の生活費が必要な方なら、準備する生活防衛費は150万~300万円ということになります。
「万が一っていっても、この金額は難しい……」という方は、民間の保険会社で扱う「就業不能保険」や「所得補償保険」なども検討してはどうでしょう。病気やケガが原因で仕事ができない期間が続いたときに、保険金や給付金を受け取れます。給付開始時期など、プランごとに異なるため注意が必要ですが、個人事業主やフリーランスの方々の収入減少への対策として適しています。あわせて、普段から生活費を見直し、余裕を持って生活防衛費を確保することで、長期的な安心につなげましょう。