忍び寄る住宅業界の「2015年問題」
たとえば、これまで年号を2桁で管理しているコンピュータが西暦2000年を1900年と誤認してしまい、処理が続行できなくなるというIT業界の「2000年問題」、新築のオフィスビルが一時期にまとまって完成(大量供給)することで、空室率や賃料が下落するというオフィス市場の「2003年問題」、さらに団塊世代の人々がこぞって定年退職の時期を迎えることで、技能の伝承や労働力不足が懸念される「2007年問題」など、いくつもの「○○年問題」がありました。
冒頭で質問した住宅業界の「2015年問題」とは、わが国の世帯数が下降局面入りすることで住宅市場の需給バランスが崩壊し、住宅販売の低迷や住宅価格の値崩れが起こるのではないかという問題です。
下図をご覧ください。この図は国立社会保障・人口問題研究所が推計した日本の世帯数の推移です。吹き出し部分にあるように、わが国の世帯数は2015年の5060万世帯をピークに減少に転じることが予想されています。その結果、マイホームを買いたいという人も減少することで、住宅不況が到来するのではないか不安視されています。
そもそも日本の総住宅数は5759万戸、総世帯数は4999万世帯(2008年10月現在)に達し、すでに差し引き760万戸の“家余り状態”となっています。完全な“飽和状態”なのです。これでは、いくら魅力的な住宅を建てたところで、計画通りに売れるはずはありません。「建てたら売れる時代」は過去のものとなってしまいました。今後、新規需要が見込みにくいなか、「2015年問題」は住宅市場に重くのしかかって来ることになります。
住宅業界は「フロービジネス」から「ストックビジネス」へと転進を始める
しかし、市場関係者も指をくわえて傍観しているわけではありません。ここ最近、ある変化が見られるようになりました。その変化とは「フロービジネス」から「ストックビジネス」への転進です。フロービジネスとは、分譲マンション市場でいえば、新規の開発・販売を継続的に繰り返し、売却益(キャピタルゲイン)を主な収益源とする従来型のビジネスモデルです。要は“売ってなんぼ”の売り切り型のスタイルです。他方、ストックビジネスとは既存の資源から生み出される収益(インカムゲイン)を目的とし、売却後のメンテナンス・フィーを柱とするビジネススタイルです。具体的には、リフォーム事業やマンション管理業などがストックビジネスの代表例となります。
需給ギャップが広がり、需要創出が難しいのであれば、無理に新しいマンションを建設しても勝算はありません。それなら販売戦略を見直し、「フロー型」から「ストック型」のビジネスモデルへと経営方針を転換させようというのが、ここ最近の目立った動きです。こうした変化を受け、マンション管理業界も賑わいを見せ始めています。
そうした矢先、マンション管理新聞社からマンション管理業者の受託戸数ランキング(2011年版)が公表されました。順位に大きな変化は見られませんでしたが、管理業界は「新築マンション市場の低迷で、寡占化とリプレイスの激化が再燃」と同社は状況を分析しています。
一体、マンション管理業界では何が起きているのか、とても気になるところです。そこで、次ページで今年の受託戸数ランキングと併せて、マンション管理業界の最新動向をご紹介します。