盆……廻り舞台とはどういうものか
廻り舞台「盆」とは?
廻り舞台の特性は、なんといっても舞台転換を素早くできるということでしょう。
盆の前側でAの場面が演じられている。その間に裏側にBの場面のセットを用意しておく。盆を廻せば、A場面がB場面に変わっている……。暗転にしてセット交換をせずに済むので、お客様の気持ちを待たせることなく、芝居に集中してもらえるというスグレ物。
驚くことに、この廻り舞台という舞台機構が初めてお目見えしたのは、18世紀中頃。それは歌舞伎の舞台でした。つまり廻り舞台は、日本生まれなんですね。もちろん現在のように電動式ではなく手動。奈落で何人もの人が手で押して廻していたそうです。これを初めて見たお江戸の人はびっくりしたでしょうねぇ。
宝塚では「盆」「盆廻り」と呼ばれていますが、舞台転換以外に“豪華に華やかに見せる”というのもひとつの手法です。
盆廻りすることによって、盆の上の人物が色んな角度から見えて美しい……奥にいる人物も廻ってくるので見える……そう、オルゴール人形のようなものです。
廻り舞台に乗る役者の苦労
さてさて、客席から観る分には引き込まれる演出方法である盆廻りですが、実際それを使うとなると、上に乗っかる役者にはいろいろと苦労も付き物です。まず――盆への乗り降り
“動いている盆に乗る”or“動いている盆から降りる”時、必ず違和感があります。
“動く歩道”(歩く歩道?)ってご存知ですか? 乗り降りする時、体が前につんのめりそうになるでしょ? あれに似た感覚なのですが、あれは進行方向に乗り降りするけど、盆の場合は横から乗り降りするからもっと違和感が。でも、つんのめるわけにはいかない。足をしっかり踏ん張らないと、フラっとしてしまいます。
そして――正面をとるのが難しい
盆は廻っています。その状況で、どちらが自分にとっての正面なのかを決めるのが難しいのです。
これはダンスシーンなどによくあることですが、正面は常に客席なのか、それとも、盆の中心から放射線状に外が正面なのか……。
また、初めの位置からまったく動かない場合は問題はありませんが、廻っている盆の上で踊る場合、ホントにどっちが正面だかわかんなくなってきます。ダンスの振りがくるくる廻る振りだと堪りません。“盆は廻る 私も廻る そしていつしか目が廻る”……まさにこんな感じ。
それから――盆の円周には細い隙間があります。そこに運悪くヒールの踵が入りそうになったり。
また照明が暗い場合の乗り降りも、ちょっと怖い。盆への最初の一歩を踏み出すのが少々怖いですね。
……と、本舞台と変わらずに見せているタカラジェンヌも、いろいろと苦労しているわけですね。
盆を使う場面のお稽古
以前「盆を使う場面のお稽古は、どーやってやるのですか?」と聞かれたことがあります。答えは「稽古場では、盆のことはあまり意識せずに稽古する」。だって仕方がありません。稽古場には盆はないのですから。だから大変なのが本番間際の舞台での稽古です。衣装を着けて、オーケストラの演奏が入り、照明も……という本番さながらの舞台稽古よりも少し前に、盆だけを廻してもらい何度も稽古をします。その時に初めて、盆の上で踊る感覚を掴みます。
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